このページでは、世界四大文明の一つであるインダス文明について解説していく。
インダス文明とは?
インダス文明は、紀元前2,500年から紀元前1,500年頃まで繁栄していたと考えられている世界四大文明の一つ。
約4,000年前にインダス川流域を中心に発展し、現在のパキスタン、インド、アフガニスタンなどに存在していた。
特に、現代のインドやパキスタンなどに影響を与えたと考えられ、古代文明の研究において重要な位置を占めている。
モヘンジョダロ(シンド地方)、ハラッパー(パンジャーブ地方)、ロータル、ケチャリなどの大きな遺跡が建設され、広い範囲にわたって貿易が行われていた高度な都市文明だったのだ。
インダス文明の特徴
インダス文明の人々は、農業、織物、金属加工、建築、衛生などの分野で高度な技術を持ち、銅、青銅などを使用していた。
以下のような特徴がある。
- 都市は街路が整然と東西南北に並んでいた
- 家屋は焼煉瓦造り
- 下水・井戸・浴場などの衛生施設が充実
- 公共的な建造物と思われる沐浴場(宗教的施設)、学校、公会堂、倉庫などがあった
- 水牛、羊、象などの家畜が行われていた
- 彩文土器を使用していた
- シュメール人のメソポタミア文明との共通性がある
インダス文明の遺跡
インダス文明の遺跡は、主にパキスタンとインドに存在している。
現在も多くの研究者や観光客が訪れているが、代表的な遺跡は以下のとおり。
モヘンジョダロ(パキスタン)
モヘンジョダロは、インダス文明の最大の都市の一つで、紀元前2500年頃に建設された。
都市計画が緻密で、道路や排水システムが整備されており、多くの建物が石材で作られている。
その中でも、大浴場や貨物倉庫、神殿、宮殿などが見どころ。
>> モヘンジョダロを詳しく
ハラッパー(パキスタン)
ハラッパーは、モヘンジョダロと同じく、インダス文明の主要な都市の一つで、紀元前2600年頃に建設された。
都市計画が緻密で、公共施設や宗教施設が充実しており、細密な彫刻が施された土器やジュエリーなどが出土している。
>> ハラッパーを詳しく
ダーン(インド)
ダーンは、インドにあるインダス文明の遺跡で、紀元前3500年から紀元前1800年頃にかけて栄えた。
都市計画が緻密で、広場や道路、建物が整備されており、多くの文化財が発掘されている。
ロータル(パキスタン)
ロータルは、パキスタンにあるインダス文明の遺跡で、紀元前3000年頃から紀元前1700年頃まで栄えた。
都市計画が緻密で、公共施設や宗教施設が充実しており、土器などが出土している。
インダス文明の謎
インダス文明には、まだ解明されていない多くの謎が存在している。
代表的なものは以下の4つ。
- 文字の謎
- 政治・社会組織の謎
- 急激な衰退の謎
- 文化的・宗教的影響の謎
それぞれ見ていこう。
文字の謎
インダス文明の人々が使用していた文字は、いまだに解読されていない。
文字は、約400種類あるとされており、印章や刻まれた石板などに見られる。
解読に成功すれば、文明の詳細な理解が可能になるが、謎のまま。
政治・社会組織の謎
インダス文明の政治や社会組織は、詳しく分かっていない。
都市文明として発展し、計画的な建設や排水システム、一定の地位を持った神殿、宮殿などの遺跡が残っているが、政治や社会組織に関する具体的な記録はない。
急激な衰退の謎
紀元前1,500年頃に、インダス文明は急激に衰退した。
その原因は、気候変動や天災、外来民族による攻撃、貿易路の変化など、様々な説があるが、はっきりとした理由は不明。
文化的・宗教的影響の謎
インダス文明が、その後のインド文化にどのような影響を与えたのかについても、研究者の間で意見が分かれている。
例えば、ヨガやヒンドゥー教の信仰につながる考え方が、インダス文明の信仰や実践に由来するという説がある一方で、完全に異なる文化的・宗教的な要素が後のインド文化に影響を与えたという説もある。
これらの謎は、インダス文明が持っていた高度な文化的・技術的発展に加え、その急激な衰退など、この文明がもつ重要性を高めている。
インダス文明とメソポタミア文明の関係性
インダス文明とメソポタミア文明は、同時代に存在していた古代文明であり、両者の文化交流や影響関係があったとされている。
しかし、その具体的な関係性については不明な点が多く解明されていない。
一方で、両文明の間に共通点が見られることから、交流があった可能性が指摘されている。
例えば、両文明の都市は、幾何学的な道路や建物の配置が特徴的であること、水利施設が発達していたこと、商業活動が盛んだったことなどが共通しているのだ。
なお、インダス文明とメソポタミア文明の文字や言語は、全く異なるため、直接的な交流があったかどうかは不明。
インダス文明には、メソポタミア文明に見られるような王権国家の形態が確認されていないことは、両文明の違いの一つ。
両文明の具体的な関係性は、謎が多く残されているが、文化的な交流があった可能性があるとされている。
参考:エラム人
インダス文明とメソポタミア文明を仲介する役割を果たしたのではないか?と「エラム人」が注目されている。
エラムは、現在のイラン高原の南西部に位置し、ザグロス山脈沿いに国家を形成。
メソポタミアの王朝により、シュメールに侵攻され、イラン高原東南部に移り、新たな首都アラッタを築きインダス文明とも接触するようになった。
エラムを通じてシュメールの文化がインダス流域にも伝えられることになったと考えられている。
まとめ
インダス川流域で生まれたインダス文明。
文化や宗教などが交錯する重要な地域であったことから、世界四大文明の一つとされている。