第一インターナショナルとは、1864年にロンドンで結成された国際労働者協会のことです。世界史では、各国の労働者団体や社会主義者を国際的に結びつけた、近代労働運動・社会主義運動の最初の大きな国際組織として覚えます。
第1インターナショナルとも表記されます。重要なのは、マルクスが関わったこと、内部にさまざまな社会主義思想があったこと、マルクス派とバクーニン派の対立で分裂したことです。
この記事では、第一インターナショナルの意味、目的、マルクスの役割、バクーニンとの対立、第二インターナショナルとの違いをわかりやすく整理します。
まず一言でいうと
第一インターナショナルは、19世紀の労働者運動を国境をこえて結びつけようとした国際組織です。
「第一インターナショナルとは?」と聞かれたら、「1864年にロンドンで結成された国際労働者協会で、マルクスが総評議会で主導的役割を果たした組織」と答えると整理しやすいです。
第一インターナショナルの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 第一インターナショナル、第1インターナショナル |
| 正式名称 | 国際労働者協会 |
| 英語表記 | International Working Men’s Association |
| 結成年 | 1864年 |
| 結成地 | ロンドンのセント・マーティンズ・ホール |
| 中心機関 | ロンドンの総評議会 |
| 関係人物 | カール・マルクス、ミハイル・バクーニンなど |
| 世界史での位置づけ | 国際労働運動と社会主義運動の先駆的組織 |
ブリタニカは、第一インターナショナルを、19世紀後半のヨーロッパ労働運動を結びつける力を持った労働者団体の連合として説明しています。
いつ・どこで結成されたか
第一インターナショナルは、1864年9月28日、ロンドンのセント・マーティンズ・ホールで開かれた集会をきっかけに結成されました。
当時のヨーロッパでは、産業革命によって工場労働者が増え、長時間労働、低賃金、労働条件の悪化などが社会問題になっていました。こうした問題に対して、国境をこえて労働者が連帯する必要があると考えられるようになりました。
世界史では、「1864年」「ロンドン」「国際労働者協会」をセットで覚えるとよいです。
結成の背景
第一インターナショナルの背景には、産業革命後の労働問題と、社会主義運動の広がりがあります。
19世紀のヨーロッパでは、工場労働者が増え、労働者階級が政治や社会の中で重要な存在になりました。一方で、労働者は国ごとにばらばらに活動していたため、国際的な連帯や情報共有が必要とされました。
| 背景 | 第一インターナショナルとの関係 |
|---|---|
| 産業革命 | 工場労働者が増え、労働問題が国際的な課題になった |
| 労働運動 | 労働条件改善や賃金引き上げを求める運動が広がった |
| 社会主義思想 | 資本主義批判や労働者解放の思想が広がった |
| 国際連帯 | 各国の労働者団体を結びつける必要が意識された |
| 政治運動 | 労働者階級の政治的発言力を高める動きと結びついた |
目的と活動
第一インターナショナルの目的は、各国の労働者の連帯を進め、労働者階級の解放を目指すことでした。
具体的には、労働運動の情報交換、ストライキ支援、社会主義思想の議論、各国の労働団体の連携などを行いました。組織の中心にはロンドンの総評議会があり、各国の運動を結びつける役割を担いました。
| 活動 | 内容 |
|---|---|
| 国際連絡 | 各国の労働者団体や社会主義者を結びつけた |
| 大会開催 | 各地で大会を開き、方針や原則を議論した |
| ストライキ支援 | 労働者の闘争を国際的に支援しようとした |
| 思想的議論 | マルクス主義、プルードン主義、アナキズムなどが議論された |
| 政治的影響 | 労働者階級の政治参加や社会改革の意識を高めた |
マルクスの役割
第一インターナショナルでは、マルクスが重要な役割を果たしました。ただし、マルクスが集会そのものを組織した創設者だったわけではありません。
ブリタニカは、マルクスは創立集会の組織には直接関わらなかったものの、暫定総評議会のメンバーに選ばれ、すぐに指導的な役割を担ったと説明しています。また、マルクスは創立宣言や規約の作成にも関わりました。
つまり、第一インターナショナルにおけるマルクスは、「最初から唯一の創設者」ではなく、「組織成立後に理論と方針を主導した人物」と理解すると正確です。
さまざまな思想が集まった組織
第一インターナショナルは、マルクス派だけの組織ではありませんでした。内部には複数の思想潮流がありました。
| 思想潮流 | 特徴 |
|---|---|
| マルクス主義 | 階級闘争、労働者階級の政治組織化、資本主義批判を重視 |
| プルードン主義 | 小生産者や相互主義を重視し、資本主義の改革を志向 |
| ブランキ主義 | 少数の革命家による急進的行動を重視 |
| バクーニン系アナキズム | 国家や中央集権的組織に反対し、自由な連合を重視 |
この多様性は、第一インターナショナルを広い国際運動にしましたが、同時に内部対立の原因にもなりました。
マルクスとバクーニンの対立
第一インターナショナルで最も有名な対立が、マルクスとバクーニンの対立です。
マルクスは、労働者階級が政治的に組織され、国家権力をめぐる闘争を行うことを重視しました。一方、バクーニンは国家や中央集権的な権力に反対し、アナキズム的な立場から自由な連合を重視しました。
| 比較 | マルクス | バクーニン |
|---|---|---|
| 思想 | マルクス主義 | アナキズム |
| 重視点 | 労働者階級の政治組織化 | 国家権力や中央集権への反対 |
| 方法 | 政治闘争や組織的運動を重視 | 直接行動や自由な連合を重視 |
| 対立点 | 中央組織や政治権力をどう考えるか | 国家そのものをどう扱うか |
この対立は、単なる個人間の争いではありません。社会主義運動の中で、国家を利用して社会を変えるのか、国家そのものを否定するのかという大きな論点を示していました。
ハーグ大会と分裂
1872年のハーグ大会で、第一インターナショナルの対立は決定的になります。マルクス派とバクーニン派の対立が激しくなり、バクーニン派は組織から排除されました。
その後、総評議会はニューヨークへ移されました。しかし、ヨーロッパの労働運動をまとめる力は弱まり、第一インターナショナルは事実上衰退していきます。
ブリタニカは、1872年のハーグ大会でマルクスの中央集権的社会主義とバクーニンのアナキズムが衝突し、第一インターナショナルが分裂したと整理しています。
解散とその後
第一インターナショナルは、1876年のフィラデルフィア会議で正式に解散しました。ただし、国際労働運動そのものが終わったわけではありません。
その後、1889年には第二インターナショナルが結成されます。第二インターナショナルは、各国の社会主義政党や労働組合を基盤とし、議会政治や労働者の権利拡大と強く結びつきました。
第一インターナショナルは短期間で衰退しましたが、国際的な労働者連帯という考え方を後の運動に残しました。
第二インターナショナルとの違い
第一インターナショナルと第二インターナショナルは、どちらも国際労働運動・社会主義運動の組織ですが、性格が違います。
| 比較 | 第一インターナショナル | 第二インターナショナル |
|---|---|---|
| 結成年 | 1864年 | 1889年 |
| 中心 | 労働者団体、社会主義者、各思想潮流 | 社会主義政党、労働組合 |
| 特徴 | 多様な思想が混在し、内部対立が強かった | 各国の社会主義政党を基盤にした国際組織 |
| 重要対立 | マルクス派とバクーニン派 | 第一次世界大戦時の戦争協力をめぐる分裂 |
| 世界史での覚え方 | 国際労働運動の先駆 | 社会主義政党の国際連携 |
社会主義運動との関係
第一インターナショナルは、社会主義運動の歴史で重要な位置を占めます。
空想的社会主義の段階では、社会改良や理想共同体の構想が中心でした。一方、第一インターナショナルの時代になると、労働者階級の国際的な組織化や政治的運動がより重要になりました。
また、科学的社会主義や共産党宣言で示された階級闘争の考え方も、第一インターナショナルの活動と深く関係します。
パリ・コミューンとの関係
第一インターナショナルは、1871年のパリ・コミューンとも関係して語られます。パリ・コミューンは、普仏戦争後のパリで成立した自治政府で、労働者や市民による政治参加の象徴として社会主義運動の中で大きな意味を持ちました。
第一インターナショナル自体がパリ・コミューンを直接組織したわけではありませんが、当時のヨーロッパでは、インターナショナルが革命運動の中心であるかのように恐れられました。その結果、各国政府は社会主義運動や労働運動への警戒を強めました。
世界史上の意味
第一インターナショナルの世界史上の意味は、労働者階級の運動を国際的に結びつけたことです。
それ以前にも社会主義思想や労働運動はありましたが、第一インターナショナルは、各国の労働者団体や思想家を一つの国際組織にまとめようとしました。この経験は、第二インターナショナル、第三インターナショナル、各国の社会主義政党や労働組合運動につながっていきます。
| 意味 | 説明 |
|---|---|
| 国際労働運動の先駆 | 各国の労働者運動を国際的に結びつけた |
| 思想潮流の交差点 | マルクス主義、プルードン主義、アナキズムなどが交わった |
| 社会主義運動の発展 | 労働者階級の政治運動を国際化した |
| 後続組織への影響 | 第二インターナショナル以後の国際組織に影響した |
| 内部対立の教訓 | 社会主義運動内の国家観・組織観の違いを明確にした |
年表で見る第一インターナショナル
| 年 | 出来事 | ポイント |
|---|---|---|
| 1848年 | 共産党宣言 | マルクスとエンゲルスが階級闘争と労働者の団結を訴える |
| 1864年 | 第一インターナショナル結成 | ロンドンで国際労働者協会が成立 |
| 1864年 | マルクスが総評議会に参加 | 創立宣言・規約作成に関わる |
| 1871年 | パリ・コミューン | 労働者・市民の政治参加と結びつけて語られる |
| 1872年 | ハーグ大会 | マルクス派とバクーニン派の対立が決定的になる |
| 1876年 | 正式解散 | フィラデルフィア会議で解散 |
| 1889年 | 第二インターナショナル結成 | 社会主義政党・労働組合の国際組織へ |
世界史での覚え方
第一インターナショナルは、次の形で覚えると整理しやすいです。
「第一インターナショナル=1864年ロンドン、国際労働者協会、マルクス、バクーニンとの対立、1872年ハーグ大会」
第二インターナショナルと混同しやすいので、第一は「国際労働者協会」、第二は「社会主義政党・労働組合の国際組織」と区別しましょう。
関連用語
| 用語 | 関係 |
|---|---|
| 社会主義運動 | 第一インターナショナルを含む広い政治・社会運動 |
| マルクス | 第一インターナショナルの総評議会で主導的役割を果たした |
| バクーニン | アナキズムの立場からマルクスと対立した |
| アナキズム | 第一インターナショナル内部の重要な思想潮流 |
| 科学的社会主義 | マルクスとエンゲルスの社会主義理論 |
| 第二インターナショナル | 1889年に結成された後続の国際組織 |
| 国際労働運動 | 第一インターナショナルが先駆となった運動 |
| 社会主義者鎮圧法 | 社会主義運動への国家的警戒と弾圧を示す政策 |
よくある質問
第一インターナショナルとは何ですか?
1864年にロンドンで結成された国際労働者協会です。各国の労働者団体や社会主義者を結びつけ、国際労働運動の先駆となりました。
第一インターナショナルの中心人物は誰ですか?
カール・マルクスが総評議会で主導的役割を果たしました。また、ミハイル・バクーニンなどのアナキストも関わり、内部対立が起こりました。
第一インターナショナルはなぜ分裂したのですか?
マルクス派の中央集権的な社会主義と、バクーニン派のアナキズムが対立したためです。1872年のハーグ大会で対立が決定的になりました。
第一インターナショナルと第二インターナショナルの違いは?
第一インターナショナルは1864年結成の国際労働者協会で、多様な思想潮流が集まった組織です。第二インターナショナルは1889年結成で、各国の社会主義政党や労働組合を基盤としました。
第一インターナショナルはいつ解散しましたか?
1876年のフィラデルフィア会議で正式に解散しました。ただし、国際労働運動の流れは後の第二インターナショナルへ引き継がれました。
確認問題
最後に、第一インターナショナルのポイントを確認しましょう。
| 問題 | 答え |
|---|---|
| 第一インターナショナルの正式名称は? | 国際労働者協会 |
| 第一インターナショナルが結成された年は? | 1864年 |
| 結成地は? | ロンドン |
| 総評議会で主導的役割を果たした人物は? | マルクス |
| マルクスと対立したアナキストは? | バクーニン |
| 対立が決定的になった大会は? | 1872年のハーグ大会 |
| 正式解散した年は? | 1876年 |
| 1889年に結成された後続組織は? | 第二インターナショナル |
参考文献・参考資料
- Encyclopaedia Britannica, “First International”
- Encyclopaedia Britannica, “Role in the First International of Karl Marx”
- Encyclopaedia Britannica, “Mikhail Bakunin”
- Encyclopaedia Britannica, “Anarchism”
- Encyclopaedia Britannica, “Second International”
- Encyclopaedia Britannica Money, “socialism”
- Karl Marx, “Inaugural Address of the International Working Men’s Association”
