新学習指導要領による教育が本格的にスタートし始めました。
新たな仕組み・新たな評価基準で学校教育が行われる大変革です。
新学習指導要領では、3つの柱が重視されるようになり、児童・生徒が身につけるべき能力も新しく決定づけられ、各教科における評価方法も変わり始めます。
そこで当記事では、新学習指導要領で重視される3つの柱の解説、評価の変化について詳しく解説します。
新学習指導要領の3つの柱
これからの変化の早い社会に対応するために、新学習指導要領では3つの柱を定め、新たに重視される項目が決められました。
重視される項目が変わると、児童・生徒に対する評価軸も変わります。
では、どのようなものが重視されるのか?
以下3つの柱です。
- 知識及び技能
- 思考力・判断力・表現力等
- 学びに向かう⼒・⼈間性等
それぞれ見ていきましょう。
1:知識及び技能
「何を理解しているか、何ができるか」という柱です。
例えば小学校の国語では、日常生活に必要な国語についての特質を理解し、適切に使うことができるようにすること。
各科目ごとに学ぶべき内容を理解し、応用して使えるようになっていることが重視されます。
2:思考力・判断力・表現力等
「理解していること・できることをどう使うか」という柱です。
例えば小学校の国語では、日常生活における人との関わりの中で、「聞く・話す」伝え合う力を高め、思考力や想像力を養
うこと。
一言で言うと「問題解決能力」です。
問題を発見する力、問題に対して論理的に考え解決する道筋を立てる力、他者と協力し問題に取り組むための表現力。
各科目の知識及び技能を活用し、問題解決する能力が重視されます。
3:学びに向かう⼒・⼈間性等
「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という柱です。
いわゆる学校での教科別の勉強だけではなく、社会で必要な人間関係を構築する力・目標に向かって達成する力・豊かな人間性の確立などです。
今後、グローバル社会が進む中で、多様性を知り受け入れ共に生きていくこと。
ネット社会が進む中で、自分の感情を知りコンロールしていくこと。
他者の気持ちや背景を想像し優しさや思いやりを持つこと。
など人間性を育むことに重点が置かれます。
新学習指導要領で変わる評価基準
学習評価改善の3つの基本方針
- 児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと
- 教師の指導改善につながるものにしていくこと
- これまで慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと
生徒の学習環境だけではなく、学校における働き方改革が課題となっていることも踏まえられています。
そのため、上記3つの基本的な考え方をもとに、学習評価を真に意味のあるものとすることが重要視されています。
各教科の学習評価が3つの柱を軸に改善
新学習指導要領の実施後は、評価軸も変わります。
新学習指導要領の3つの柱を踏まえて評価軸が設定されます。
現在の学習指導要領からの評価方法の変更については、文部科学省からもいくつかのポイントが示されています。それぞれの観点について、どのようなポイントが重視されていくのか見ていきます。
1:「知識・技能」の評価
- 個別の知識及び技能の習得状況について評価する
- 既有の知識及び技能と関連付けたり活用したりする中で、概念等として理解したり、技能を習得したりしているかについて評価する
上記2点です。
ただし、現在の評価の観点にある以下2つも重視されます。
知識・理解:各教科等において習得すべき知識や重要な概念等を理解しているかを評価
技能:各教科等において習得すべき技能を児童生徒が身に付けているかを評価
1問1答形式で評価できるような知識だけではなく、出題方式が工夫されることになります。
例えば、ペーパーテストでは、事実的な知識の習得を問う問題と知識の概念的な理解を問う問題とのバランスに配慮。
実際に知識や技能を用いる場面を設ける。
児童生徒に文章で説明をさせる。(深い理解を試す文章題など)
各教科等の内容の特質に応じて、観察・実験をさせたり、式やグラフで表現させたりする。
などの評価になります。
2:「思考力・判断力・表現力等」の評価
各教科等の知識及び技能を活用して課題を解決する等のために必要な思考力、判断力、表現力等を身に付けているかどうかを評価する。
ただし、現在の評価の観点にある「思考・判断・表現」の観点においても重視されます。
ペーパーテストに限られないこと評価になります。
例えば、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作や表現等の多様な活動を取り入れる。
ポートフォリオを活用する。
などの評価になります。
3:学びに向かう⼒・⼈間性等
上記2つと違い、やや複雑になります。
- 主体的に学習に取り組む態度として観点別学習状況の評価を通じて見取ることができる部分
- 観点別学習状況の評価や評定にはなじまない部分
例えば、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察、児童生徒による自己評価や相互評価等の状況などを教師が評価を行う際に考慮する材料の一つとして用いられます。
ただし、ノートの取り方や挙手の回数など、児童・生徒の性格による部分や形式的なものによる判断から、さらに深く「粘り強く学習しているか?自分で学習を調整しようとしているか?」を評価していきます。
2つの部分をそれぞれ見ていきましょう。
主体的に学習に取り組む態度として観点別学習状況の評価を通じて見取ることができる部分
知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組の中で、自
らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価するものです。
観点別学習状況の評価や評定にはなじまない部分
児童生徒一人一人の良い点や可能性、進歩の状況について等、個人内評価を通じて見取るものです。
特に「感性や思いやり」などは積極的に評価し、児童生徒に伝えることが重要視されます。
新学習指導要領が重視する「生きる力」とは?
新学習指導要領では、「生きる力」を育むことに重点が置かれています。
その背景には、これからますます加速するネット社会やグローバル化など、今までの社会にはなかった急速な社会への変化に対応することを課題としています。
特に国が目指しているのは、以下2つ。
- 問題解決能力の育成
- 多様性への理解や主体性
時代の延長線上を歩み答え合わせをしていれば豊かな人生が送れていた時代ではなくなり、自ら考えて課題を創造し、自ら答えを見つけ、新たな時代を創り上げていける人間の育成が必須だと考えられています。
例えば、英語やプログラミングの必修化。
ディスカッションやディベートなどを通した対話力の強化。
過去の教育では重視されなかったことが刷新されています。
小・中学校「道徳」の評価
児童・生徒の学習状況や道徳性に関わる成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要があると定められています。
ただし、数値などによる評価は行わないものとなります。
基本的な考え方は以下5つです。
- 数値による評価ではなく記述式
- 個々の内容項目ごとではなく、大くくりなまとまりを踏まえた評価
- 他の児童・生徒との比較による評価ではなく児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価として行う
- 学習活動において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか?道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかを重視
- 調査書(内申書)に記載せず、中学校・高等学校の入学者選抜の合否判定に活用することのないようにする
道徳の考え方も変わりました。
まとめ
新学習指導要領で重視されるのは以下3つの柱です。
- 知識及び技能
- 思考力・判断力・表現力等
- 学びに向かう⼒・⼈間性等
上記をもとに、各科目ごとに評価が工夫されることになります。
全体の流れを総括すると、従来の答え合わせ的な教育から問題解決能力や自主性、思考力、対話力が重視されるようになります。
ただ勉強をして良い点数を取ることを目指すだけではなく、そのプロセスにある「なぜ勉強するのか」「勉強を通してどんな力が養えるのか」を深く浸透させていくことが、より大事になっていきます。
また、国が力を注いでいる英語やプログラミングにも積極的に触れていくことも重要です。