約10年に1回改訂される学習指導要領。
2018年度から教育機関ごとに徐々に導入され始めています。
学習指導要領が変わると、授業内容や時間、学習方法などが大きく変わり、それにより成績評価も変わったりします。
しかし、教育現場で働いていない限り「何が、どのように、いつから、なぜ」変わるのか分かりづらいと思います。
自分の子供時代とは全く変わっているため、息子や娘がどのような状況で勉強をしているのか気になる親御さんも多いはず。
そこで当記事では、新学習指導要領について分かりやすくご紹介します。
新学習指導要領が導入される時期・タイミング
新学習指導要領が導入されるタイミングは以下です。
- 幼稚園:2018年度
- 小学校:2020年度
- 中学校:2021年度から全面的に実施
- 高等学校:2022年度に入学した生徒から年次進行で実施予定
- 特別支援学校:小・中・高等学校の学習指導要領に合わせて実施
全ての教育機関が一斉に変わるのではなく、タイミングが異なります。
新学習指導要領に変わった理由
学習指導要領は、社会のニーズや時代の変化に合わせて、約10年毎に変わり続けています。
今回の学習指導要領に変わった背景には、以下4つが大きく影響しています。
- 情報化社会の加速
- グローバル化の加速
- AIの飛躍的な発達
- 予測困難な時代の到来
これからの時代は、情報化社会がさらに加速し、どんなことにもインターネットと切り離せない社会に進んでいきます。
あらゆる物やサービスのあり方が一変し、物理的な壁がほとんどなくなっていきます。
物やサービスだけの壁だけではなく、国境や言語の壁もなくなりグローバル化が加速していくでしょう。
さらに東南アジアの国々の急速な発展により、日本の発展が遅れを取るような分野も数多く出てきています。
このような社会になるなんて、一体誰が予想できたのでしょうか?
とてつもないスピードで時代が変化している中で、さらにAIの飛躍的な発達により、誰もが予測不能な時代に進んでいます。
そんな急速な社会の変化に対応し、生き抜いていくために必要なのは何かを改めるべく学習指導要領が改訂されました。
新学習指導要領が導入されて具体的に変わること
幼稚園、小学校、中学校、高等学校ごとに具体的に変わることの違いがあります。
変わることの種類が多いため、大きく変わったことを各学校ごとにご紹介します。
全体の変化:「どのように学ぶか」
「何を学ぶか」を重視するペーパーテスト的な学習方法から、「どのように学ぶか」を重視する学習方法に変わっていくようになります。
特に「アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)」を重視する流れに変化していきます。
具体的には、グループディスカッションやディベートなどで能動的に学習する機会の創出です。
急速な時代の変化についていくためには、与えられた情報を受動的に取り入れ学習する能力だけでなく、コミュニケーション能力や能動的に動く力を身につけることに重きを置くようになったためです。
幼稚園
2018年度から、新学習指導要領の「幼稚園教育要領」が導入されています。
現在、具体的な教育内容の変化は特にありません。
しかし、教育方針に変化がありました。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が明確化されました。
下記10項目です。
- 健康な心と体
- 自立心
- 協同性
- 道徳性・規範意識の芽生え
- 社会生活との関わり
- 思考力の芽生え
- 自然との関わり・生命尊重
- 数量・図形、標識や文字などへの関心・感覚
- 言葉による伝え合い
- 豊かな感性と表現
上記を幼稚園教諭と小学校教師と共有するなど連携を図り、幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続を図ることを強化する方針になりました。
今までよりさらにスムーズな小学校進学を可能にするためです。
また、教育課程の役割と編成などを新たに示しているいため、今後変わっていくことが予想されます。
- 各幼稚園のカリキュラム・マネジメントのさらなる充実
- 基本的な方針を家庭や地域とも共有
- 教育課程を中心に幼稚園の様々な計画を関連させ一体的に教育活動が展開されるよう全体的な計画の作成
小学校
大きく変わったのは以下3項目です。
- プログラミング教育
- 英語
- 道徳
プログラミング教育
必修となります。
ネット社会の変化、AIの導入など急速な時代の変化に対応するためです。
小学校では、以下2つの習得を目指します。
- コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作
- コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力の習得
仕事が受注できるほどのスキルを身につけるのではなく、あくまでも基礎を学ぶ程度です。
もし、より進んでプログラミング教育を行いたい場合は、プログラミングスクールなどに入会すると良いでしょう。
外国語(英語)
新教科として英語が導入されます。
成績のつく正式な教科です。
英語は小学3年生から「外国語活動」としてスタート。
4年生までの2年間で「聞く」「話す」のコミュニケーションを中心に、年間35時間の授業を通じて、英語に慣れ親しんでいきます。
5年生からは年間授業時間が70時間に増えます。
最終的には、アルファベットの大文字・小文字の習得や英語の文構造を把握までです。
今までは中学1年生でやっていた基礎的な部分を小学校で行うことになります。
道徳
成績評価の対象にはならない予定ですが、特別教科という位置付けになります。
新しい教科書に刷新されます。
中学校
プログラミング教育
中学校では、すでにプログラミング教育が実施されていましたが、学習内容が追加されます。
追加されるのは「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」です。
ソフトウェアを使いこなす受動的な学習だけではなく、ネットワークの活用やプログラミングによる問題解決など能動的な学習へ。
外国語(英語)
大きく変わるのは授業時間です。
各学年で105時間から140時間に増えます。
しかし、文法事項などの学習内容はほとんど増加していません。
つまり、「書く」「読む」の言語処理能力の強化ではなく「聞く」「話す」のコミュニケーション能力の育成を強化する方針です。
各学年ごとに具体的な内容が掲げられています。
- 1年生:自分の気持ちや身の回りの出来事などの中から簡易な表現を用いたコミュニケーションの育成
- 2年生:事実関係を伝えたり、物事について判断したりした内容の中からのコミュニケーションの育成
- 3年生:様々な考えや意見などの中からのコミュニケーションの育成
「書く」「読む」はもちろん、「聞く」「話す」のコミュニケーション能力を段階的に学習していきます。
高等学校
主権者教育
公民科に「公共」が必修科目として導入されます。
「公共」が導入される時代背景に大きく2つが影響しています。
- 選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げ
- 2022年度から成年年齢が18歳になる予定
高校卒業後は、選挙権を持つ成人として社会に参加することになります。
今までは公民科の中で、「現代社会」または「倫理」「政治・経済」のいずれかが必修でした。
しかし、「現代社会」が廃止され事実上「公共」に変わり必修となりました。
子どもたち自らが主体となって政治を動かし、社会に参画する力を身につける主権者教育の強化です。
学習の範囲は「現代社会」と大きく変わりません。
しかし、学習方法が大きく変わり、ペアワークによる対話やグループ単位での調査・発表になる予定です。
アクティブラーニングを活用した学習方法に変化していきます。
消費者教育
2022年度に成年年齢が20歳から18歳へ引き下げ予定です。
高校卒業と同時に、保護者の同意を得ずに締結した契約を取り消すことができる立派な消費者となります。
消費者の力を育成するため「公共」と「技術家庭科」の授業を通して、消費者契約の重要性や権利行使の仕方など学習します。
まとめ
学習する科目で見ると「プログラミング」と「英語」を重要視していると思っていただいて間違いありません。
そして、コミュニケーション能力や問題解決能力をはじめとした「能動的」な能力の育成に力に注いでいく方針です。
ペーパーテストを乗り越える勉強だけではなく、人や社会との対話から自ら進んで問題を解決していく力を創造力がキーワードになっていくでしょう。